部屋に入った瞬間出てくるのは、自分でもうっとうしくなるぐらい暗いため息。

――反吐が出る、あんなの。


今さらどの面下げて俺の前に来るんだ。

俺も奈里ちゃんも忘れたかったのに、忘れるために笑おうとしていたのに、全部台無しだ。


自分を守るように両腕で体を抱きしめてその場に座り込む。

傷口がぐじゅりと音を立てて抉り出される。


思い出してしまえば胸の中に渦巻くのはひたすらに黒い闇だけ。
いいや、闇よりもっと黒々して鈍く光っている。


あの人の存在自体を自分の中から消し去りたくなるぐらい。


本当に本当に、いなくなってしまえばいいのに。