「頼、何かあったの?」 頼の視線が一瞬揺らいだのを見逃すはずがない。 そして今日ばかりは私も素知らぬフリをするわけにはいかない。 彷徨う目線。 昨日の不自然な言葉の濁し方。 それらに首を突っ込まなかった私。 「…奈里ちゃんの家に行った時にしゃべるよ」 私以外の誰にも聞かれたくない内容、と来たら。 「りょーかい」 それだけ言うと、彼は安心したように強張っていた頬を緩めた。 全開の窓から風は吹き込まず、だけどそれ以上に爽やかな青色が広がっていてため息が出てきそうだった。