水気を含む空気を吸いながら、冬月は秋月(あきつき)の部屋に向かっていた。


いつもの習慣である。兄におはよう、と。――しかして最近、兄は留守にしがちだった。


兄弟別々で妖怪退治に行くために、遠方ならば会わないことも多く、いつ帰ってくるかもわからなかった。


くじ引きみたいなものだ。さて、今日は当たりかハズレかと期待と不安を持ちつつ、冬月は二度目の曲がり角で兄の部屋についた。


兄の部屋の前に、駕籠(かご)が一つ置いてあった。


舌切り雀にでてきそうな、ワラでできた駕籠だ。昔話では、大きい駕籠には妖怪が入っていたそうだが。


「ヒャッハー、ここは通さねえぜえぇぇっ!」


昔話に逸話はなく、上半身だけの骸骨が駕籠から飛び出てきた。