岩だった。微動だにしないそのさまは。
秋月の本領発揮か、岩が川となる。
慌ただしい流れながらも、決して濁らない流水の如き太刀筋。
翻弄され、時折浮き上がる波の威力に舌を巻いた。
唾液で濡れたはずの口腔が渇く。
攻め際が分からない、流されてばかりだ、これでは。
川に落ちた虫のようにもがくが、沈んでは浮きの繰り返し。
息つく暇もなく、いつの間にか呼吸が乱れた。
――刀戦において、呼吸の乱れは気の乱れとなり致命的であった。
鈍る冬月の太刀筋は、土砂降りの中の川に過ぎず、濁りきり、せっかく捉えた虫をも、勢い余って岸へと打ち上げてしまう。
「なにぃ、その太刀筋。ぜんぜん成長しとらんねぇ」
暴れ馬と相違ない。自分の思い通りにいかないと暴走する子馬だった。


