「あかん……耳まで馬にぃなったか」
念仏すらも意味は持たない耳は、都合のいいことしか聞かないらしい。ならば、と秋月は言う。
「久々に手合わせしちゃるぅ。愛の鞭や。もしも兄ちゃんに勝てたら、お前の言うこと何でも聞いたろうか」
「何でも……!」
冬月の心が弾んだ。
あれやこれやと兄にさせたいことが浮かび、唾液が溢れてきた。
蜘蛛切を一ノ文字に構えて、横薙ぎをした。
対する秋月は童子切安綱で十の字を描いて、防と攻に移った。
感じたのは蜘蛛切から伝わる鈍い振動。決して刀身は歪むことはないが、力強さにはそれを無駄予知してしまう。
後退することなく、冬月は踏み込む。背を低くして、肋を袈裟斬りにしようとするが防がれた。
斜めに構えられた童子切安綱。恐らくは、先ほど冬月が浴びたのと同じ力が働いているだろうが、秋月の刀は一ミリたりとも動かなかった。


