「鈴理先輩。俺は諦めないっすからね!」
覚えていやがれ台詞を吐き捨てて、俺は教室を飛び出した。
半切れの大雅先輩が俺の後を追ってくる。
鈴理先輩から何もお言葉がなかったのは寂しかったけど、それより今は大雅先輩だ。
すぐに諦めてくれると思ったのに、階段を下りても下りても廊下を走っても走り抜けても俺を追い駆けてくる。俺のファンか!
「くらぁ待ちやがれ!」後方から聞こえて来る喝破に、「うぇい待たないっす!」俺は果敢にも返した。
もっとメンドクサくなることは分かっているのに。
一生懸命足を動かして走っていると、「聞け豊福!」大雅先輩が声音を張った。
「てめぇがしたくもねぇことを強制されてんのは分かってるんだよ。今はざけたことしか言えねぇのも承知だ。分かってっから!
いいか、もうちっとだけ待っとけ! 鈴理がてめぇを迎えに行く! 側には玲だっているだろうが!」
俺は前方を見据えた。
そんなこと言わないで下さいよ。
俺にはもう、時間がないんっす。
もう、何もかもが遅いんっすよ。
「豊福、忘れんな! 鈴理はガチでテメェのことが好きだ。今のお前じゃ誘いには乗らない。それがテメェのためだって思ってるから!」
向こうの気配が止まった気がした。
俺の足は止まらない。
止まれないんだ。
どうしょうもなく臆病者の俺は振り返ることもできずに、ただ前を向いて走ることしか出来ない。
視界が滲んだけど、それは気のせいだと自分に言い聞かせて俺は廊下を駆けて抜けていった。
振り返ることはもう、許されない。



