俺はぎこちなく足に視線を落とした。
強張った俺の表情に御堂先輩が不思議そうな顔をしてくる。
「豊福?」声を掛けてくる先輩に、「なんでもないっすよ」さあ退いてください、とやんわり訴えた。
俺の様子に首を傾げていた先輩だけど、彼女の体の一部が俺の足に触れた瞬間、俺の体が跳ねた。
刹那、ニッタァっとあくどい笑みを浮かべるプリンセス。
俺の表情の意味を察したらしい。
「素直じゃないな」
触って欲しいなら触って欲しいって言えばいいのに、と言って人の足を掴んできた。
声を上げてしまう俺は全力でタンマをかける。
「せ、せんぱっ…、意地悪っす! 触らないで下さっ…、うわっヅ!」
「本当に素直じゃない子だな。豊福は。触って欲しいくせに」
どう見たらそうなるんっすか!
「貴方だって経験あるでしょっ! この辛さは並大抵のものじゃっ、ほんっと、む、無理っ…、ギブっす! アダダダッ!」
畳を叩いて呼吸を荒くする俺に、「ほっらぁ」と先輩が太ももを触ってきた。
「ヅッ!」身悶える俺は本当にもう無理だと訴える。
どさくさにまぎれて足をもんでくるもんだから、ほんっと無理! 俺は死ぬ! 足が死ぬっ、死んでいる!
正座とか慣れないんだよっ。
殆ど家では胡坐だからっ、アイダダアダ! 足が痺れたー!
「玲お嬢様。空さま。湯殿が用意できたのですが」
障子向こうから、微かに聞こえてくるのはさと子ちゃんの声。
けど俺達はちっとも気付かない。
「先輩許して下さいっす」
もう無理だと俺は泣き言を並べ、「素直になったら」許してあげてもいいぞ、と先輩は意地悪ばっか言ってくる。
何、スイッチでも入った?
ほんっと堪忍して欲しいんだけど。