鈴理が事の騒動を知ったのは彼氏の泊まりから帰宅して直後、夕暮れの刻のことだった。
久しぶりに有意義な時間を過ごせたため、文字通り鈴理はご機嫌もご機嫌。機嫌のベクトルは天を向いていた。
軽やかな足取りで自室に戻り、荷物を机上に置くとベッドに腰掛けて泊まり会の一夜を思い出す。
携帯を片手に思い出していたのだが、それはそれは楽しい一日だった。
相変わらず彼氏は初々しいし、キスをすればするほど溺れてくるし、触り心地も最高で以下省略。
両思いになったことでその行為に拍車が掛かってくる。
いずれは彼氏を食らうのだと意気込んでしまうのは、仕方のない欲情なのだろう。
弾んだ気持ちを抱えて携帯を弄った。
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チェックするために十字キーに指を掛けていると、突然携帯が声を上げた。
着信だ。
相手は誰だろうか。
ディスプレイを覗き込む。表記は『二階堂大雅』だった。
よっぽどのことがない限り連絡を取り合わないため、許婚からの連絡に鈴理は目を剥いた。
ボタンを押して電話に出る。此方が何かを言う前に、
『鈴理。まじどうする?!』
珍しく焦った許婚の声が鼓膜を振動した。
喧嘩ばかりしているが、許婚とは悪友である。何かあったのかと相手を宥めながら用件を尋ねる。
すると何を言っているのだと大雅は頓狂な声を出した。
が、鈴理の落ち着きっぷりを察して、お前はまだ知らないんだな、と苦言を漏らした。妙な胸騒ぎを感じてしまう。
「どうしたんだ?」
大雅に繰り返し聞くと、彼は重々しい口調でのたまった。