「―――…本日はお招き頂き、まことにありがとうございます。夕食は勿論、泊めて頂けるなんて光栄です」
 
 
Q.懇切丁寧に挨拶するのは誰ぞなもし。

A.俺の彼女です。
 

攻め女の欠片も見せず、微笑を浮かべて俺の両親に挨拶している先輩に俺は複雑な念を抱いていた。

仕事から帰宅してきた両親は礼儀正しい先輩に好感度を上げているようだけど、俺もそれは嬉しいんだけど、普段の先輩を知っているからこの変貌っぷりにはなんとも複雑である。まる。

ちゃぶ台を囲んで互いに挨拶している両者を見やった俺は、お淑やかに談笑している先輩を見て心中で溜息。

俺にはそういうお淑やかの「お」も見せてくれませんよね。

攻め女だからって割愛はしていますけど、たまにはそういう姿も見たいっすよ先輩。彼氏として。

 
話は戻り、両親が仕事から帰宅した。

先に母さん、後から父さんが帰宅したんだけど美人先輩が部屋にいたことにちょっち戸惑っていた。


泊まりに来ることは知っていたけど、改めて部屋に令嬢がいると異質っていうか。

圧迫感があるというか。

普段住んでいる部屋に違和感があるというか。なんというか。
 

だよなぁ、俺だって未だに戸惑うことがあるよ。

あれこれ考えている間にも、父さんが何も無い部屋だけどゆっくりして欲しいと先輩に告げていた。


「ありがとうございます」


笑顔を零す先輩の穏やかな笑みといったら…、可愛いじゃないっすか。いつもは雄々しいのに!