だけど彼女は帰る気満々のようだ。
さっさと鞄を持って玄関口でローファーを履く。
急に余所余所しい態度になる彼女は、「決めたからな」主語なしに俺に宣言してくる。
決めたって何を決めたんっすか。
目を点にする俺は首を捻るばかり。
御堂先輩はもう決めた、嘆かないし迷わない開き直ってやると早口で決意、そっと体ごと俺に振り返る。
「最後にひとつ。君は女の王子をどう思う?」
「どう…、え、そりゃあカッコイイんじゃないっすか?
俺の彼女、一応ポジション的に言えば王子っすよ。
姫扱いは男の自尊心ズタボロになるっすけど、一々性別を考えていたら先輩の彼氏なんて無理っす。って、あ、御堂先輩」
話の途中で「邪魔したな」、彼女は玄関扉を開けて出て行ってしまう。
急いでサンダルを履いて後を追うけど、もう御堂先輩は階段を下り始めていた。その背に向かってイチゴ大福のお礼を言うけど、振り返ることはない。
なんっすか、ツンツンしたりセクハラしたり余所余所しくなったり、忙しい人っすね。
ぽりぽりと頬を掻く俺は階段を下りて行く先輩に手を振って部屋に戻った。
ま、なにはともかく沢山イチゴ大福を貰ったんだ、今度は白餡の方を食べよーっと。