まだ軽く荒呼吸を繰り返す俺に、さあもう一度キスだと鈴理先輩。


実はディープキスにも種類があるから、それを試しながらじっくりとあたしを覚えような、とウッキウキ声で仰ってくれる。


マジっすか。

今さっきのキスだけでもう、俺、アップアップなんっすけど。
 

「むりっす」もうちょい休憩したいとギブアップしてみるけど、「仕置きはこれからだぞ」したり顔で笑っているであろう彼女が無慈悲なことを告げた。


「あたしの最大の目的は、キスをするだけで欲情してしまう空を作り上げることだ。

そうすれば、嫌でもセックスしたくなるだろ?
寧ろお誘いとかしてくれた日には、日々持参している道具やらなんやらでかなり張り切るぞ。

さあ、欲情できるよう頑張ろうな。
田中が戻ってくるまで20分はあるだろうから、20分、余す事無くキスを堪能してヤらしー体になるようお互い努力しよう」



!!!!

 
そ、そんなえげつない目論見があったんっすかっ! 
 
ちょ…、ちょぉおおお、そんな悪巧みを聞いた後にもっぺんキスとか無理っすっ。絶対無理っすっ!
 

仕置きだろうがなんだろうが、今すぐに目隠しは取るっすよっ!

というか冷静に考えれば、被害者の俺がなあんで仕置きなんてっ、御堂先輩が全部悪いのであって俺に非はない筈っす!


もう十二分に仕置きは受けっ、うわああっ、ちょ、ちょぉおお先輩!


「んんんっ!」

くぐもった悲鳴を上げる俺に焚き付いたのか、彼女は合間合間に「二度と他人に触らせないようにしてやる」などと高らかに大宣言。
 


「よりにもよってあの好敵手に触らせたんだっ。たーっぷり、体に教え込んでやるからな。あんたがあたしの何か、身の程を持って知れよ」



お、怒ってる! 見えないけど彼女のオーラに怒気が纏ってる!

先輩っ、俺が思っている以上に怒ってっ、「イ゛っ」耳齧ってきたしっ!

なんか艶かしい空気になってっ、うわぁあああ田中さあぁああん早く戻って来て下さいっす!

じゃないと俺っ、おれっ、マジで食われるっ!
セックスなしって先輩は言ったけどっ、この雰囲気じゃ彼女の理性がどれだけ持ってくれるかっ。
 
 

いっつも思うけど、俺ってどぉおしてこう、自分で自分の首を締めちまうようなことをしちまうんだろっ―――!
 
 

どう後悔しても後の祭り。

俺は過去にないほどの仕置きを食らい、スンゲェ恥ずかしい思いをしたんだけど、それは後日談としていずれ語らせてもらおうことにしよう。
 


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