あれ以来、僕のリハビリのペースはさらに上がっている。

(甘えちゃいられない)

 そんな思いが確実に芽生えていた。


 すでにベッドを囲んでいた檻は取り払われ、代わりにハンドルを回して強制的に膝を曲げる器具が常にベッドの上に鎮座してる。

 重力に頼ったものとは違い、さすがに強烈だ。

 それでもそのハンドルを一日中回し続けた。


 理子の病状は僕が考えていたような半端なものじゃない。そして妙子さんだって、立てるようになるまで何ヶ月もギプスベッドに固定され、まんじりとも動けない日々を送っていたそうだ。

 隣の憎たらしい西村さんだって、神経の切れた利き腕に代わり、必死に左手を使えるように訓練を怠らない。

(俺だけじゃない)

 そう。誰もが闘い、そして苦悩しているのだ。



 そんなリハビリの成果は医師の目を見張らせた。林医師は連日病室を訪れては、膝の角度を測り、そして満足そうに頷いた。

 自分で納得できる以上の成果であっただろうことは容易に想像できる。

 しかし、日々訪れていた林医師がここ何日か姿を見せない。それほど気には留めなかったが「そういや来ないな」くらいには話題に上った。