「…これ…、」
見た瞬間、私は言葉を失った。
棗さんが私に見せたい写真…
それは、『私』だったのだ。
月明かりの下、泣きそうな顔でカメラの向こう側にいる人物を見る一人の少女。
…まるで私じゃないような、そんな錯覚に陥った。
「…。」
…棗さんには、私はこんな風に写ってるの?
言葉にならない感情が、雫になって頬を伝う。
「…俺さ、ひとを被写体にしたいと思ったの初めてなんだ。」
棗さんが、パネルを穏やかな表情で見上げながら言う。
確かに、棗さんの写真はどれも自然や『ひと』以外の生き物ばかりだ。
「…だけど、初めてシャッターを押したいと思った。…陽依は、ひとを変えるくらいの力をもってるんだよ。」
「…え?」
「…大丈夫だよ、きっと。陽依の想いが届く日が、きっと来る。」
…棗さん、きっと夕都とのことを言ってるんだ。
諦めるな、まだ頑張れる、そんなメッセージなんだ。
不器用でぶっきらぼうな、棗さんらしい背中の押し方だと思った。
「…ありがとうございます、棗さん。私…まだ、頑張れます。」
棗さんの中の『私』をしっかりと目に焼き付けて、私は言葉を発した。
「…うん。」
…それはそれは穏やかな表情で、棗さんは私をまっすぐに見つめていた…──。

