「陽依。」
どれくらいそうしていたのか、辺りはもう山際が明るいくらいで、星がちらつきはじめていた。
名前を呼ばれて顔を上げると、人影が東屋の前に佇んでいる。
「…遥季。」
「…風邪引くぞ。夏風邪は、バカがひくっていうし。」
遥季は東屋の中に入ってくるなり冗談ともつかない口調でそう言うと、羽織っていたパーカーをばさりと私の背中に被せた。
「…。」
三角座りをしたまま、私は顔だけあげる。
「…。」
そんな私の隣に、遥季は黙って座った。
「…釉梨の手紙、見なくてよかったのか?」
少しの沈黙の後、遥季がぽつりと呟くように言う。
「…私が見ちゃ、いけない気がして。」
素直に言うと、遥季の視線が私の横顔を捉える。…痛いくらいの視線を感じた。
「…どうして。お前はもう、ここの…。」
ふと遥季を見ると、苦しそうな、切なそうな…
複雑な表情をしていた。
「…あの手紙、夕都に見せたら、夕都が余計に釉梨に惹かれるって…考えなかったワケ?」
「…え?」
わざと私を傷つけようとするような、冷たい口調で言う遥季は…
自分の方がずっと、辛そうな表情をしていた…──。

