「…お風呂沸いたら呼ぶから、部屋戻っときな。」
玄関のホールで傘をたたむと、棗さんはそう言った。
「え、でも…」
「いいから。早く行きなよ。」
「…だからって、なんでそういうことしたの!ひよりんが傷つくの分かってたよね!?」
渋る私の耳に、たっくんの怒鳴り声が聞こえる。
「…っ拓海、」
棗さんがあわててリビングに行こうとするのを、私は黙ったまま遮った。
「陽依…」
目を微かに見開いて、私を見つめる棗さんに、私は無理に微笑んだ。
…きっと、たっくん達が話しているのはさっきのことだ。
「夕都、なんでそんなことしたねん。なんか理由があるんやろ?」
竜君のたしなめるような声がゆっくりと響いてきた。

