どれくらいたったんだろう。
私の体を濡らしていた雨がパラパラと何かに当たる音がして、降り注いでいるはずの雨が降ってこない。
ゆっくりと顔を上げると…
「…棗、さん…?」
私に傘をさす棗さんがいた。
「…。」
黙ったままで私を見下ろす棗さんに、私は視線を反らす。
次の瞬間、まるでスローモーションのように棗さんの足元にある水溜まりの雫が跳ねる。傘が濡れたアスファルトに落ちる。
そして、引っ張られるように棗さんの腕の中に抱き締められた。
「陽依…」
哀しみと熱が籠もった声で、棗さんが私の名前を呼ぶ。
棗さんの髪からぽたぽたと首筋に落ちてくる雫と棗さんの温かさに、瞳の奥が熱くなって…
私はぎゅっと目を閉じた──…

