そして、私の足元にひざまずくと、掴んだ私の手のひらに軽くキスを落とした。
「陽依…お相手願えますか?」
それはまるで、本物の王子様で。
私は魔法にかかったみたいに、動けなくなる。
「陽依、返事は?」
魅惑的な声で囁く棗さんに、私は思わず頷いていた。
「ふっ、いい子。」
そう言って笑うと、棗さんは私の手を優しく握って広場へと誘導してくれた。
「あれ…山科くんよ?隣のいるのは…どなたかしら?さっきも一緒に入ってきたけれど…。」
三年生の先輩方が、訝しげに私を見る。
…大丈夫かな。
やっぱり、あれだけ目立つと、いい意味でも悪い意味でも目立つ。
「さ、いくよ?」
音楽にあわせて、棗さんがステップを踏みはじめる。
それに合わせて、私も緊張しながら付け焼き刃のステップを踏み出した。
ぐっと近づく棗さんとの距離に、緊張していた心臓がよけいにバクバクしてきた。
「…陽依、緊張してる?」
耳元で、棗さんが囁く。
素直に頷くと、棗さんはクスリと笑ったあとで優しく言った。
「いいんだよ、上手く踊ろうとしなくて。楽しんで。」
その言葉に思わず顔をあげると、棗さんが優しく微笑んでくれた。

