俺がステージの袖に到着したのと同時に、ピアノ演奏の1人目でもある3年の女子がステージ中央で深く一礼していた。 彼女が選んだ曲は、流行りのシンガーのバラード。 この曲を選んで正解だ。 生徒たちは馴染みのある曲に、じっと聴き入っている。 一方の俺は――? これから俺が弾く曲を知っている生徒は数える程度しかいないだろう。 退屈すぎて、無駄話をするにはもって来いの時間になるかもしれない。 それでもいい。 俺がステージでこの曲を弾くのは、ここに集まった全校生徒に聴かせるためじゃないから。