空気が重くなったところで、ホールからボーイを呼ぶ声が聞こえた。 一番肌の黒いギャル男が部屋を出ると同時に、普段開けっ放しにしている部屋のドアを閉めていった。 空気が読めるボーイだ。 彼はきっと出世するだろう。 「彩音さんには、ほんとに敵わないね」 相川さんはそう言って、ビールを一口飲んだ。 彼が仕事中に酒を口するのを見るのは、久しぶりだった。 「響香が金を持ち出したのは聞いた?」 「はい、ひーちゃんから」 「そう。そのことで、俺、響香の自宅に行ったんだよ」 「それで?」