小首を傾げたときに、中の壁にメモが張ってあるのに気づく。剥がしてみると、メモは何枚か重なっていた。紙の裏、上部が粘着性。なにかを雑記できる大きさの付箋だ。彼からのメッセージなら心も踊ったが、私の字だった。

『2008年6月30日 彼が死んだ』

何枚かめくる。

『2008年5月14日 彼が事故に会う』

何枚かめくる。

『2008年1月11日 名前が思い出せない』

『2007年12月9日 今日は彼がパスタを作ってくれた。名前は思い出せない』

『2007年10月11日 朝にヨーグルトを食べた、と確認』

一番古いメモには。

『2007年2月27日 私はそういう病気らしい』

とある。

ああ、そうか。そういうことらしい。だからか。

なんだか余計に疲れてしまった。でも、ある意味気も楽になった。嫌われて、彼が来なくなったわけではなかったから。

それにしても悲しい。どうして彼は死んでしまったんだたか。メモには事故とある。なぜ、どんな事故かのメモはないのだろう。思い出せると思っていたんだろうか。彼が死んだことも忘れていたのに。

機嫌も気分も悪い。こんな時には、プリン……特に焼きプリンが食べたい。ああでも、彼が機転を利かせてくれることはもうない。思い返せば私はずいぶんわがままを言ってきた。

あれをこれをを思い出しても両手の指の数を越えてしまいそうなので……








NoFin