「落ち着いて、二人とも」

「つまり、メシアが宿る卵子なんだよ、今、
 おまえん中にある卵子は!
 メシアの体を作る予定の、
 すぅぅっげぇ霊力の高い、すぅげぇ卵なんだよ、
 だから皆宿りたがるわけだ」

「狐はね、君の中に入ろうとしたものを、
 退治してくれたんだよ、今」

じゃぁ、さっき私の腿に、
足を置いたあの行為は、
もしかして私を守るための行為?

でも、腿に足、って。

「・・・」

腑に落ちない顔で、
見つめたら狐は不機嫌そうに顔を顰めた。

「俺のこと見えるようになっただけ、マシだけど、
 鬼が見えてねぇとか、どうなんだ?」

「すぐ見えるようになるよ」

シンが私を擁護。

「・・・鬼?」

「とか、悪魔とか、妖怪とか、幽霊とか、
 色々、あんだよ、実際はよ、
 ・・・信じねーから見えねんだよ、
 てめーら現代人はよ、古代の奴等を少しは見習えよな!!」

と説教をかましてから、流れるよう、狐は私の向かい席に座った。

「え、ちょ、なんでそこに座るの、
 やだ、変態と向かい合わせなんて」
「変態言うな」
「大体、狐なのにどうしてそんなチャライいでたちなの?
 シンナー吸ってそう・・・」
「チャラくねぇし吸ってねぇ」
「あれってあんまり吸ってると歯とか欠けちゃうんでしょ」
「知らねぇよ吸ってねぇし欠けてねぇよ」

ぷ、とシンが噴出して、緊張が解けた。
涙は何時の間にか止まっていて、嗚咽も収まっていた。