災難にあった飛行機は、
中継地、オランダに降り立った。

オランダの、
アムステルダム空港。


広く、見通しの良い長い廊下を歩いて歩いて、
ロビーに着くと色鮮やかなショップが連なっていた。

「わー、チューリップ!
 チューリップ売ってるー!
 そっかー、
 オランダってチューリップか、
 後は・・・何だっけ、
 風車?」

はしゃいで声を上げながら、狐を見た。
狐は青い顔をしていた。

「狐?」
「うー・・・」

そして、尻尾丸出し!!

ちょっ・・・!


幸い、広い空港内に、一緒の便だった乗客は分散し、
夜遅いことも手伝って、現地人も疎ら。

日本人青年の尻(腰?)あたりから、
長くて、
ふさふさで、
毛並みのツヤツヤした、

尻尾が、

だらーりと伸びていても気にする人はいない。



いや、いる。


私が気にする。

「ちょっと、尻尾!」
「うー」
「出てる出てる!」
「うー」
「狐?」


「気持ちわりぃ・・・」


「え?!大丈夫?」


尻尾をずるずると引き擦りながら、
狐は肩を落として行進していた。

考えてみれば、日本の神様(御狐様って神様だよね?)
で、大昔から生きてる、所謂お年寄りの中のお年寄り、
みたいな狐が、飛行機に乗って海外まで来る・・・、

なんて、


大変なことなんじゃないの?

この旅の目的は、私の受胎儀式なわけだから、
私のために・・・
こんなところまで来てもらってるわけだよね?


「無理しないでいいから、
 ゆっくり行こ」
「うー」

狐は唸りつつも、こくんと頷いた。


気分は野生動物を運ぶスタッフ。
繊細な生き物は、労らなければ。


『やはりテオ様ですね』

例の、ツイッターのごとき脳内通信で、
ザビエルさんが声を掛けて来た。