彼女は振り返らずにそのまま通路を歩いていった。 どんな表情でその言葉を聞いたのかは、わたしにはわからなかった。 そうして今、運ばれて来たばかりのハンバーグセットを、樹は黙々と食べている。 無言で、でも心は何かにとらわれたまま、ハンバーグにソースをからめて平らげていく。 ねぇ樹、今……何を考えてるの? 誰のことを考えてる? わたしは、ここにいるよ? 「ん?」 視線を感じたのか、不意に樹が顔を上げた。 「うまいか?」 フッと笑顔になって訊いてくる。 樹って……ごまかすのがうまい。