「わわっ、ゴメン」 あわててご飯をかっこもうとすると、横から手が伸びてきた。 「ゆっくり食いな」 小さな子供にするみたいに、その手がわたしの頭を撫でる。 「うん…」 もぐもぐと牛丼を食べながら考えていた―― 出会ったとき既に1年返してあと5年残っていると言っていた彼の借金の返済は あれから2年が経ち、合計3年分の支払いが終わっているはずだ。 だけど樹がそんな話を全然しないから、わたしなんか借金があること自体忘れちゃってたくらいなんだよ。