「一度だけ…見かけたことがあるよ」 樹が言った。 「何を?」 「制服姿で歩いてる真琴」 「えーっ、声かけてくれればよかったのに!」 「車流れてたから一瞬で通り過ぎちまった。 朝、歩道を歩くお前とすれ違っただけ」 「クラクション鳴らしてよ」 「バーカ、前の車が驚くだろ」 「…全然知らなかったし」 「てかな、10トン車 珍しいんだから注目しとけよな」 樹が笑った。 そっか。ホントだ。ゴメン。 「まだつきあう前の話だよ」 「ふうん」 「5月の終わり頃…」