ハルアトスの姫君―君の始まり―

「おお、すまないな、小僧。」

「だから!おれは小僧じゃねーって!」

「分かっている。
クロハ・ローシュ。ジェリーズの薬屋の末息子。医者のはしくれ、だな。」

「ど…どうしてそれを…。」

「お前の顔に書いてある。」

「はあー?」

「そんなわけはなかろう。」

「んだよてめぇ…!」

「私に向かって『てめぇ』などと言える輩はある意味もう『ヒト』しかいないな。
いや、もはや『ヒト』でさえ私を知っていると捉えるべきか…。」


キースは曖昧に微笑んだ。
それを見たシュリは少し満足そうな笑みを浮かべている。


「お前…一体何者なんだ?」

「それはもう一人が揃ってからにしよう。説明を2回するのは面倒だ。」

「説明?」

「キース、お前は裏の井戸の水でそれを洗い流せ。」

「もちろんそのつもりですよ。」

「茶でも飲んで落ち着け、クロハ。」

「っ…てめぇ…いきなり呼び捨てかよ。」

「私よりも年下に敬語を使う必要はないだろう?」

「…と…しした、なのか?」

「私は今この家にいるイキモノの中で最年長者だ。」


そう言うシュリの微笑みは形容しがたいほど妖艶だった。