「ほんとは…もっとちゃんと祝いたかった。」

「充分だよ。君が傍にいてくれる、それだけで本当に。」

「…傍にいるっていうより…看病してもらってるだけ…だし…。」

「したくてしてるんだからいいんだよ、ジアが気にすることじゃない。」

「風邪、うつしたくない。」

「…うつしてくれてもいいけどね。」


不意にキースがぐっと距離を詰めて来た。
唇が触れてしまいそうな距離に、キースの端正な顔がある。


「っ…!だめ…!」


咄嗟に唇を両手で覆う。本当に風邪をうつしたくない。


「…どうして?俺はジアの風邪ならもらっても苦しくない。」

「あたしは苦しいっ…!」

「頑固だね。」

「誕生日に風邪をプレゼントなんて絶対したくないの…!」

「そっか。…じゃあ違うものを貰おうかな。」

「え…?」


両手の上にキースの温い手が乗った。ゆっくりと力を込められるのを感じる。
まずは右手が剥がされた。


「っ…キース…?」

「左手も邪魔、だね。」


いつもとは少し違う、いたずらな笑みを浮かべて、あたしのあまり力の入らない左手をも剥がす。