ハルアトスの姫君―君の始まり―

* * *


式典が終わり、使用人たちを振り切って中庭へと走って来た。


「っ…はぁ…はぁ…っ…もう、一人で大丈夫だって言ってるのにっ…。」


ドレスは脱ぎ捨てて、比較的動きやすいドレスを身に纏って来た。
本当は旅をしていた頃のように動きやすい短い丈のパンツが良かったが、そんなものは少なくともあたしの部屋に置かれてはいない。


城の敷地内であるため、襲われるということは考えにくいが万が一ということもある。そう思って部屋の片隅に立てかけてある相棒とも呼べる剣を携えた。


「はぁー…疲れた…っ…。」


思い切り草原に寝転んで新鮮な空気を吸う。
式典を楽しむことはできたけれど、とにかく長かった。たくさんの人とお話しすることも、笑顔を間近で見ることもできて心は充実しているけれど身体的にはやはり疲労する。


「…でも、シュリが褒めてくれた。」


それを思い出すと思わず顔がにやけた。滅多に褒めてくれないシュリだからこそ、褒められると嬉しい。
…早く、王宮に招きたい。そのためにはたくさん勉強をしなくてはならないし、お父様の公務についていって経験も踏まなくてはならない。やるべきことは盛り沢山だ。
そこまで考えを巡らせて、一番心の奥に引っかかっていることに辿り着いた。


「…やっぱりいなかったな、キース。」


もしかしたら来てくれているかもしれないと思っていた。
でも、どれだけ探しても会場でキースを見つけることはできなかった。


「あっという間だったけど…でもやっぱり長かったよ…。
あたしいつまで…待てばいい…?」


待つことは難しい。それは待ってみて初めて分かったことだった。
性格上、自分で何でも挑戦してしまうためかえって待つことは難しく、得意だとは言えないものだった。