ハルアトスの姫君―君の始まり―

【シュリside】


「シュリ、会っていかなくてもいいの?」

「…今は会えないだろう。式典はまだ続く。それに聞きたいことは全て聞けた。」


ジアには伝わっている。
決して声にはしなかった言葉が、しっかりと。


「でも、なんだか嬉しいね。まさに王の器だ。」

「まだまだ未熟だがな。でも顔つきは…王族だ。」


凛とした表情も強気な眼差しも元々ジアに備わっていたものだった。それに気品が加わったことで王族たる高貴さが増した。それが威厳に繋がっている。


「良き王になる、ジアは。
その時にはお祝いに訪れようではないか。今回のように忍んで、ではなく。公式にな。」

「そうだね。…そんなに遠い未来の話でもなさそうだし。」

「ジアには不可能そうなことも可能にしてしまうような勢いと強さがある。
…信じてしまいそうになる、な。」

「信じてないの、シュリ?」

「そんなわけはない。…信じているよ、ジアの作る未来を。」


何もなくなったヴィトックスには魔法使いが僅かながら戻って来ていた。
魔法使いも魔法使いで人間への疑念は晴れていないが、それでも訪れた平和に胸をなでおろしているのは確かだった。
その平和をもたらした若き剣士がこの先の王になるということに対しては希望に近いものを抱いているようだ。


「クロハも城で元気にやっているようだし、私とお前はまだまだヴィトックスの再建という仕事がある。
…残るは一人、最大の問題児だな。」

「キースのことだね。…一体どこに行ってるんだ、彼は。もう半年だよ?」

「場所の見当はついているが…私達が口を出していい範疇じゃない。
進むためには必要だったんだろう。この時間が。
…奴の時間は止まりすぎていた。押し動かすにはそれこそ多大な時間と労力が必要だ。」


だがしかしキース、待たせすぎだ。
これでは次期女王との差がますます増してしまうぞ、と心の中で呟いた。