ハルアトスの姫君―君の始まり―

涙が零れ落ちそうになるのをぐっと堪える。この場に涙は似つかわしくない。


「だから、あたしは在ることを誰からも否定されない世界を作りたい。
みんなそれぞれ違う。だからいい。それでいい。そう思える世界を…。
そしてもう二度と無駄な血を流すことのないよう、争いを生みださないことを約束します。」


そこまで言い切ると、入場して来た時とは比べ物にならないほど大きな拍手があたしを包んだ。


「ジア様ー!」

「一生ついて行きます!」

「ジア様っ!大好きです!」

「ジア様ー!」


名前を連呼される度に視界がぼやけていく。
そのぼやけた視界をどうにかするべく目元を拭うと、たくさんの笑顔が目に飛び込んでくる。


シュリの口元が動いた。
『…よくやった。さすがだ。』と、その口は言っていた。


シュリとシャリアスの背中が遠ざかっていく。
今は引き留めることができないけれど、いつか。
…もっと多くの人間が魔法使いという存在に対して誤解を持たなくなるように、力を尽くす。


だから、キース。


あなたがいつ戻って来ても大丈夫なように
傍にいたいと思うのはあたしも同じだから



だから新しい世界を望む。
望むだけじゃ手に入れられないものだから、自分で作る。


キース、今、なんだか無性に…


あなたに会いたい。