「…っ…お姉様っ…!」

「ジア…戻ったのか…?」

「さすが、だね。」

「キースてめぇ…上等だ。」





魔力を食いつくした穴が閉じる。
破壊を望んだ魔女はもう、戻らない。





「…ミア…が…戻ってる…。」


ぼんやりと焦点の定まらない目でジアはなんとかミアを捉えた。


「お姉様っ!?」

「ジア!」


それだけ言って瞳を閉じたジアの身体が地面に着く前にキースがそっと、その身体を抱きとめた。


「…眠ってる。オーバーワークだね、完全に。」

「お姉様っ!」

「…大丈夫だよ、ミア。眠ってるだけだよ。」


目を閉じた瞬間にジアの瞳から零れ落ちた涙をキースはそっと掬った。


「…ジョアンナをあの空間の中に置き去りにしてしまったこと、気に病んでるんだね。」

「置き去りってどういうことだよ!?」

「俺もまだ全てを把握しきれたわけじゃないから上手い説明ができない。
でも、ジョアンナは飲み込まれた。どこに辿り着いたのか、そもそもどこかに辿り着くのかも分からないけど…恋人の残像に近いものが作った時空の歪み(ひずみ)に。」

「話は後だ。そんなことよりまずは全員の体力回復を図らねば。」

「…その通りです。休みましょう。ひとまず終わった。
呪いはこれで解かれた。ジアとミアの呪いも、この城を覆っていた哀しみも。」