ハルアトスの姫君―君の始まり―

おそらく―――――それは同時だった。


シュリが風を使った防御魔法を使ったのと、ジョアンナ様が炎の渦を僕たちに向かって放ったのは。




「シュリ!」

「っ…。」





天井から休むことなく炎が降り注ぐ。ジョアンナ様の声はするものの、その姿は見えない。
…おそらく自室からこの状況は見えていて、その上でこの空間の外から魔力を放出しているのだろう。


炎の魔法はあらゆる魔法の中でも凶暴な魔法の方に属する。
悪意ある炎は全てを焼き払い無に帰す。
ジョアンナ様が狙っているのはまさにそこだった。
〝僕とシュリを消し去ること〟





「お前たちはいらないのだ。
だから、ここで死ね。…痛みなど感じさせずに焼き払ってやる。」

「だ…まれっ…!」


シュリの頬を炎の熱による汗が滑っていく。


「シュリ…。」

「…諦めたような声を出すな。」

「っ…ごめん。僕にはもう力が…。」

「分かっている。」


シュリの方だって消耗しているというのは見た目に明らかだった。
何も魔力を放出していないジョアンナ様の魔力の残量の方が多く、炎はますます激しさを増した。