ハルアトスの姫君―君の始まり―

「シャリアス…?」


私の声に応じるようにゆっくりと目を開け、身体を起こす。
一度気が緩んだせいで、指先の炎が小さくなってしまった。


「シュリ・ヴァールズ…。
あなたはやはり、強かった…。」


シュリ、では止まらず続いたその名に、彼が彼ではないことを思い知らされる。


「終わりにしましょう。…残念ですがあなたの勝ちです。」

「…何を…言っているんだ?」

「僕にもう魔力は残っていません。先程ので使い果たしました。
…華吹雪をこれほど崩壊させる魔力を放ったのですから。」


負けを認める言葉にしてはあまりにも淡々とそれは紡がれ、聞いているこっちが拍子抜けしてしまう。


「何が言いたい?」

「このゲームは終わりだということです。
勝者はシュリ・ヴァールズ、あなたです。
そして敗者はこの僕。
だからこそあなたには僕を殺す権利と義務があります。」

「権利と…義務…だと?」

「ええ。」


シャリアスはあっさりとまた肯定した。


「…私にそんな義務はない。」

「いいえ。負けが死を意味するのです。この城では。」

「それはこの城のルールだ。
それに従う理由がない。」

「…あなたが僕を殺さなければ、ジョアンナ様が殺すまでです。」

「お前は…私に殺されることを望むのか?」

「はい。負けた相手に殺されるのが本望です。」


あまりにも曇りなく、真っすぐにそう言うシャリアスに、
―――涙が出た。ただ単純に悲しいと思ったからだろう。