ハルアトスの姫君―君の始まり―

ふらつく身体を一度叩き、身をもたせる。
涙を拭おう。進むために、終わりに向けて。


指先の震えは収まった。
―――やるべきことは、一つだけだ。





指先に炎を集める。
もし仮に、シャリアスが目を覚まして風の魔法を使ったとしても自爆するように炎を選んだ。
…最後の魔法だ。





ジア、すまない。
最後はお前に任せてしまうことになりそうだ。
おそらくお前は怒るだろう。
ただ一つ、『迷うな』という私の言葉を最後まで貫いてくれたことに感銘を受けたとだけ言っておこう。


関わってはいけない、人間という存在だった。
それでも私はお前に関わったことを後悔していない。
出会えて、良かった。





指先の炎の温度を限界まで高める。
苦しいのはお互いに嫌だろう?
一度で溶けてしまえるような温度にしよう。





「一人で死ね、とは言わない。
生きるなら共にありたいと願った。だから最後は…」


死ぬのならば共にあろう。
お前のいない世界に、未練などないのだから。


そう思って手をかざしたその時だった。





「シュリ…。」


そう、名前が呼ばれたのは。