ハルアトスの姫君―君の始まり―

* * *


「どうだ、収穫はあったか?」

「シュリ!」


小屋にはもうすでにシュリとミアが戻っていた。
ミアが足元にすり寄ってくる。心配そうな表情を浮かべてジアを見つめた。


「ただいま、ミア。…大丈夫よ。そんな顔しないで。」

「にゃあ。」

「収穫ならあったぞ。」

「…ヒトはいたか?」

「ああ。ギルっつー名前の老人。
王宮に勤めていたらしい。」

「そのようなヒトがまだ生きていたか…。」

「ジアを見て『マリアンヌ』って言った、あいつ。」

「…マリアンヌ…と言えば王妃だな。
彼女とジアが似ている、と。」

「そう言っていた。」

「王妃様に似てるなんて有り得ないよね!多分見間違い…。」

「…なわけねぇだろ。
あいつ、似てたからお前に声掛けたんだぞ?」


クロハの語気が一瞬だけ強まる。
その声色に僅かに戸惑った。


「…クロハ…?」

「クロハには何か考えがありそうだな。…いいから言ってみろ。」

「なぁ、ジア。
お前とミアは…王家の人間じゃないのか?」

「え…?」


クロハの言葉を上手く飲み込めず、思考がそのまま固まった。