ハルアトスの姫君―君の始まり―

* * *


物音一つしない城の中で、漆黒の長い髪が揺れる。
その冷えた瞳は相変わらず、窓の外へと向けられている。





「…シャリアス。」

「何でしょうか?」

「来たようだ、〝彼ら〟が。感じているか?」

「…そんな気がしていましたが…。
捜索に向かいましょうか?」

「それはお前の仕事ではない。…キース。」

「はい。」


無機質な声でキースが答える。


「私が招いた客ではない。…キース、お前の客だよ。」

「私の…客…?」

「そうだ。お前の客はお前が迎えに行くのが道理というもの。
…少し魔法を解こう。その方が感動的な再会になる。」


ふわりとジョアンナの手がキースにかざされ、一瞬強く光る。
一瞬ふらついたキースを、シャリアスが背後から支えた。


「…大丈夫です。」

「では迎えに行ってこい。『招かれざる客』を、な。」

「…分かりました。」