ハルアトスの姫君―君の始まり―

「はいはい分かったとキースの言うことを飲み込み、自分の気持ちを抑えるのも一つ。
そして、キースの気持ちなど分からない、勝手にいなくなって腹が立っていると伝えるのも一つだ。
どちらを選ぶかはお前次第。どちらも選ばないという選択肢もある。
どちらにせよ、お前が決めて動くことに意味がある。
それが『自分を変えること』だよ、ジア。」

「自分を変える…。」


今、自分はキースに会ったとして、何を伝えたいのだろう?
キースに何を想うんだろう。


涙が出たのはどうして?
―――悲しかったから。


何が悲しいの?
―――キースがいなくなったことが。


それだけ?
―――それだけじゃ…ない。



分かったんだ。
キースはきっと、あたしたちを守るために離れたのだということ。
そしてそれは、あたしたちが頼りにならないという事実だということに。










「強くなる。」


静かに、低く、そう言った。