ハルアトスの姫君―君の始まり―

ジアの目に入ったのは身体中傷だらけの男だった。
明るめの短い黄土色の髪は所々血に染まっている。
そして左肩には矢が刺さっていた。しかし…


「息…してる…。」


ジアは彼に駆け寄った。
彼の胸が微弱だが動くのを見た。


「ねぇ!意識ある?大丈夫?ちょっ…ちょっと待ってて。」


彼からぱっと手を離し、クロハの元へと急ぐ。





「クロハーっ!ちょっとこっちに来て!大変なの!」

「はぁ?つーか意味分かんな…。」

「いいから早く!怪我人よ。しかも重症の。」

「怪我人?生きてんのか?」

「息はしてた。ところで今何時?」

「4時だ。あと8時間経たないとミアの力は使えない。」

「…8時間…。」

「もつのか、そいつ。」

「それをもたせるのが医者の役目でしょ?」

「…そーだな。」

「こっち!早く!」

「おう。」