ハルアトスの姫君―君の始まり―

* * *



辺りが薄暗くなってきた。
…そろそろ今日の宿を決めなくてはならない。
もっとも、この辺に宿と呼べるようなものはない。



「あっ!見てクロハ。」

「あぁ?」

「小屋がある!今日1泊くらいは泊めてくれるかも。」

「バっカお前…どうすんだよ兵士がいたら…。斬られんぞ。」

「じゃあ確かめてくるからここにいてよ。」

「あ、おい!ジアっ
…ったく…言いだしたらきかねぇんだから…。」


クロハの独り言をよそにジアはゆっくりと小屋に近付いた。
少し大きめの窓から部屋の中を覗く。


「…ほこり…まみれ…?」


中には木の机と壊れかけの椅子が一つ。
それ以外は何もなかった。
もちろん人もいない。


「…誰もいないのかな…?」


そう言いながら小屋の反対側に移動しようとした、その時だった。










「きゃあっ!!!」