ハルアトスの姫君―君の始まり―

【キースside】


「ヒトと魔法使いの…ハーフ…?」

「そう。俺の半分はジアと同じ人間。そしてもう半分は…魔法使い。」

「…じゃっ…じゃあ、キースもシュリみたいに魔法が使えるの?」

「…そうだね、使える魔法もある。魔力はシュリ様ほどではないけれど。」

「なんで今…こんな大事なこと…。」

「今、だから。」

「え?」

「今だからだよ。」


それ以上は何も言えない。
今だから言わなくちゃならない。君の前から去る今だから。


「…シュリは知ってるの?クロハは?ミアは?」

「シュリ様は…多分会ったときから知ってる。
魔法使いは、その纏う気みたいなものでお互いが魔法使いであることを見極める。」

「じゃあクロハは?」

「クロハは…自分で気付いて俺に言ってきたんだ。
『お前、魔法使いだろ』って。
クロハに嘘は吐けない。だから肯定したよ。」

「…どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」


ジアの声が震えている。
そんな風にさせているのが自分だと分かっているからこそ辛い。
いや、辛いのはジアであって俺であってはならない。そんなの分かっている。


「言い訳に聞こえるかもしれないけど…。
言っても誰も幸せにならないから。」


それは揺るぎない事実だった。
誰も幸せになどならない。
ならば背負わせたくなどない。