ハルアトスの姫君―君の始まり―

「…ありがとう。」


ジアは表情を緩め、笑みを浮かべて二人の方を向いた。
それにつられてガルドもチャーリーも少しだけ微笑んだ。
その笑顔に安心を覚えたものの、ジアの手の震えは収まらない。


酷いことをしてしまった。仲間、に対して。
そのことがジアの心を責めていた。
『手段は選ばない』なんて、そんなのは建前だった。
多分二人も気付いていたのだろう。
しかし、自分から微かに流れてきた殺気を感じとっていたのも事実なのだと思う。
それが苦しい、だなんて。
言っていることとやろうとしていることがあまりに伴わない自分に嫌気がさす。こんなことでやっていけるのだろうか。


「ジア…大丈夫か?」

「平気よ。こんなの。」


これは強がりだ。きっとミアもクロハも気付いている。
それでも口にしないのは、彼らが優しいからだろう。


「行きましょう。早く安全な場所を見つけないと。あと、肝心なのは情報収集よ。」

「そうだな…。」

「にゃあー。」





震える手に無理矢理指示を出し、ジアは二つの刃を鞘に収めた。
ルビーが太陽を受けてキラキラと輝いていた。