ハルアトスの姫君―君の始まり―

「感覚的な問題じゃないよ。実際にそうだった。
だからもう誰も…俺の問題には巻き込まない、そう決めた。」


それこそ迷いのない言葉に一瞬たじろいだ。
その瞳にはどこか切なさが混じっていて、心を急速に冷たくしていく。


「…それはジアが魔法使いじゃないから…か?」

「いや、それは関係ない。
そもそも、魔法使いは俺に踏み込んでこない。
俺は魔法使いの枠に属さないからね。」

「じゃあ…。」

「誰に何を言われようと自分で言うつもりはないよ。
だからと言ってクロハを口止めする権利は俺にない。
必要だと思えば言ってくれて構わないし、それを咎めようとも思わない。」

「言ったらお前はどうする?」

「別にどうもしない。自分からは。
でも出て行けと言われたらもちろん出て行くよ。」

「そんなこと…ジアが言うと思うか?」

「思わない。…思うはずないだろう?」


少し目を細めてキースはそう言った。
どこからこの切なさが生まれてくるのか、不思議で仕方がない。


「俺の存在が君たちを危険に晒さないうちは…いるよ。拒まれない限りは。
だけど、もし俺のせいで君たちに危害が及ぶようなことになったらいなくなる。」

「何も言わずにか?」


その言葉が口から滑り落ちたのは反射のようなものだった。