ハルアトスの姫君―君の始まり―

「クロハならそこを突いてくると思ったよ。
細かいところは端折るけど、どうにも母親が関係しているみたいだ。」

「母親?」

「俺の母親が魔女だったんだよ。父親が人間。本当に普通の。
母親は本当に魔法使いの中でも稀に見る能力の持ち主だったらしくてね、治癒力も尋常じゃなかったらしい。
…遺伝、かな。多分。母親の治癒力だけ異常にね。」

「お前の魔法使いとしての能力はどうなんだ?」


困ったように笑いながら、キースは続けた。


「…ホント、どこまでも突いてくるね、クロハは。」

「今を逃したらもう訊けねぇ気がしてな。」

「訊けるときに訊いておこうってこと?」

「ああ。」

「迷いがないね。」

「迷ってなんかられるか!」

「確かに。迷いは必要のない人間には本当に必要のないものだし、迷いがないものはある意味強いから。」

「ごちゃごちゃした言い回しは嫌いだ。とにかく答えろ。」

「…俺の能力だよね。とりあえず、一通りの魔法は使えるよ。ただし攻撃系が主だけど。
治癒は一切使えない。だからクロハの手助けはできない。」

「そんなこたぁどうだっていい。治療を頼む気はない。」

「そっか。」

「攻撃系が主っつーことは他も使えんのか?たとえば…移動系とか。」

「随分勉強したんだね。知識も負けちゃいそうだよ。」

「お前はそうやってすぐはぐらかそうとする。…いい加減にしろ。」


声に怒りとも焦りともとれる表情が混ざってしまったのは、おそらく焦りが強かったからだろう。
そんな自分に気付いて、思わず表情が歪んだ。