ハルアトスの姫君―君の始まり―

「なるほどね。あの怪我、かな?」

「ああ。ミアが治せるのは一つの傷だけだ。それ以上は治せない。
それなのにお前は…。」

「すぐに治った。他の部分も。確かに人間離れした能力だよね。
…特に俺は、他の魔法使いよりもそれが顕著だ。」

「それはお前がハーフだからか?」

「それはどうか分からないな。
俺は自分以外の人間と魔法使いのハーフを知らないから。」

「…だよな。お前の存在は…。」

「禁忌だ。いてはならない『はず』の存在。
だから俺はヒトにも魔法使いにも属さない位置にいるんだ。」


今のキースの一言で全て分かったような気がした。
奴が時折見せる切なげな表情も、飄々とした佇まいも。
ヒトとも魔法使いとも一線置いた風に生きるその姿の理由。
『どちらにも属さない』
それゆえの孤独、距離。
上手く言葉にできない、見えない何かが確かにキースの周りにあるように感じた。


「キース。」

「なにかな?」


キースがころっと表情を変えた。柔らかい笑顔を浮かべている。


「魔法使いの血が半分なのにもかかわらずお前の治癒力が高いのは何でだ?」


腑に落ちないのはここだった。
治癒力の高さが魔法使いの特徴の一つだ。もちろん致命傷一撃を受ければ死ぬのはヒトと大差ないが。
だが単純に考えればキースの血は半分ヒトだ。ということは治癒力も半分になるはずである。
それなのにキースは自らの口で『他の魔法使いよりもその能力が顕著だ』と言った。
それなりの治癒力を有しているのだろう。
だが…納得はいかない。