ハルアトスの姫君―君の始まり―

向かうと、不機嫌そうに顔を歪めたクロハが俺を迎えてくれた。



「遅ぇよ、キース。」


ぶっきらぼうに落とされた言葉は冷たくこそないけれど温かくは決してない。


「ごめんごめん。ミアと話していたんだ。」

「ミアと?」

「ミアは優しいんだね。それが痛いほどよく分かった。」

「…何の話をしたんだよ?」

「心配されたよ、ただ単純にね。」

「余計な心配させんな。」

「そうだね…それについてもごめん。」

「謝ってばっかだな、お前。」

「これからの話次第では、もっと謝ることになりそうだけど。」

「何言われるか、分かってんのか?」

「大体の見当くらいはついてるよ。」


嘘を吐いても話が長引くだけであることは明白だった。だからこそ認めるべきところは認め、円滑な会話を目指す。
クロハはその発言に顔をしかめた。


「…そうかよ。じゃあ話は早いな。でも場所が場所だ。移動すんぞ。」

「そうだね。」


なるべく穏やかな表情を浮かべようと努める俺とは違い、クロハはしかめっ面のまま外へと出た。感情と表情をあえて直結させているのだろう。


静寂に包まれたヴィトックスの森に二つの足音だけが残る。