ハルアトスの姫君―君の始まり―

「猫としての自分と人間としての自分、そのどちらの状態であっても『自分』を見分けてくれる、片割れ以外の『誰か』。
感覚的にですが、それでも確かに見分けてくれていたこと、それがどれだけ嬉しいかは私もお姉様と同じくらい分かります。」


ミアの少しはにかんだ表情が一瞬だけジアに被って見えた。
子どもっぽい表情は本当にとてもよく似ている。


「そういう表情はとてもよく似ているよ。」

「そう…ですか?」

「うん。すごくね。」


キースは笑顔でそう答えた。ミアもまた、笑顔で応じる。


「それじゃ、そろそろ行かないと。
クロハが話す前から怒ってしまいそうだし。」

「引き留めてしまって申し訳ありません。」

「いや、そういう意味じゃないよ。
むしろ…ミアと話せて良かった。クロハよりも先に。」

「え…?」

「傷付かないで済みそうだから。」


それだけ言い残すと、ミアたちの部屋をあとにした。
ドアをゆっくりと閉め、キースは背中を少しだけ預ける。


「おやすみ、ミア。
…良い夢を。」


ドアにその言葉だけを残して階段を降りる。
次の話はこんな風に穏やかに終わることはないだろうと思うと、少し気は滅入るがそんなことも言っていられない。


言わずに引き延ばしたのは自分だ。
その責は自分で負うのが道理というものであろう。