【クロハside】


「…はぁー…。」


ため息は一人しかいない部屋だからこそつけるものだと思っている。
だからこそ、人前で溜め息を吐くのは呆れている時だけだ。


「…ったく…聞いて呆れる…。何が『怖い』だよこのバカ。」


隠していたことが明らかになるのを恐れる理由まで、きっとジアは考えていないのだろう。
大方、それが今の考えだった。
何故怖いのか、そこまで考えてから言葉にしろよと声を大にして言いたい。


「みゃあ?」

「ミア…いたのか。」

「みゃみゃー?」

「…心配してくれてんの、何となく分かるけど…。
心配しなきゃなんねぇのはお前の姉だよ、おれじゃない。」

「にゃー…。」

「もうすぐ満月だな、ミア。」


そう言ってクロハはミアの喉元を撫でた。


「お前の姉はキースにバレんのが怖ぇんだとよ。
…どういう意味で言ってんだって話だよ、ったく。」


拒絶を恐れるのは、拒絶され離れていく未来が見えるからだろう。
離れていくのが怖い、それはつまり…


「離れたくねぇってことだろーが。」


いなくなることを恐れる。
それほどまでに奴はあいつの心に浸透している。
良くも悪くも、と言えばきっと俺が叱られるのだろうが。


「ま、拒絶はねぇな。離れていくこともあいつはしねぇ。」

「にゃー。」

「同意だろ、ミア。」


ミアはこくんと頷いた。