ハルアトスの姫君―君の始まり―

「…目、か…。」

「だからね…あたしはすごく嬉しかったんだ。」

「え?」

「キースが目を見て綺麗だって言ってくれたこと、すごく嬉しかった。」


ジアは微笑んだ。少し涙で滲んだけれど、それ以外は上手く笑えた気がする。
それを見てキースも微笑んだ。


「気味悪がられる対象になってるとは思わなかったな…その目が。」

「だって、普通の人は同じ色でしょ?」

「…ヒトは普通じゃないものを排除したがるからね。」


その言葉は排除されたことのある人の言葉のように思えた。
ただ知ったかぶってそう言っているのではないということだけは分かる。


「キースもあるの…?こういう経験…。」

「ジアとは全く違う理由でね。」

「そう…なんだ…。」


ジアは肩を落とした。
自分と同じような気持ちを味わっている人が他にもいたという安堵感よりも、同じ辛さを感じたことがあるということがただ痛い。


「ジアがそんなに落ち込むことじゃないよ。」

「だって…辛いじゃん。弾かれるのは。」

「そうだね。辛いと思ってた時期もあったよ、確かに。
自分ではどうしようもないことが原因だったから。」


『自分ではどうしようもないこと』
それはジアもそうだった。物心ついた時にはもうこの目だった。