ハルアトスの姫君―君の始まり―

「…そういう考え方も…できるんだね。」

「死んだらもう何もできないからね。」


キースの口から出た『死』という言葉がジアの心を大きく抉った。
この世では今、誰もが明日死んでもおかしくない。
『死』は常に『生』と隣り合わせに存在している。


「あたし…甘いのかな、考え方。
ただ会えないのが辛い…とか。」

「そんなことないよ。
…ジアは大切な人、いたりしたことないの?クロハとか…。」

「え?クロハは大事だけど…クロハは好きな人いるもん。ちゃんと。」

「え?あ…そうなの?」

「そうだよ!ってキース、結構鈍感…?」

「え?」

「あー…じゃあ言わない。」

「そこまで言って結局言わないとか生殺しだよ、ジア。」

「だってクロハに怒られちゃうもん。
というわけでクロハは大切だけど、そういう…なんていうか特別に大切ってわけじゃないよ。もう家族みたいな感じ。」

「そうなんだ…。」

「それに今までだってそういう特別な人いたことなんて一度もないよ。
あたし…この目…だし。」

「目?」

「両目の色が違うのって…結構気味悪がられるんだよ?」


恋とか愛とか、ジアにとっては疎遠なものだった。
それは昔も今も変わらない。