ハルアトスの姫君―君の始まり―

* * *


目が覚めると隣にシャリアスはいなかった。
身体中に残っただるさが、自分がどれほど愛されたのかを如実に示していた。
布団をはいで自分の素肌を見ると、赤い跡が数え切れないほど残されていた。
シャリアスの身体に何度も唇をつけた。
…彼の身体にも自分と同じくらい跡は残っているだろうか。
そんなことをぼんやりと考える。


彼がいない、それなのにその事実を淡々と受け入れることができている自分に驚く。
分かっていたこととはいえ、もっと取り乱すかと思っていた。それなのに…


「花詞だけは約束だ。」


窓際の花瓶に挿された一輪のピュアラズリが揺れる。
オレンジの花弁が太陽の光を受けて少しだけ輝く。


『永遠にあなたを忘れない』


それは二人で交わした約束。


『この村であなたを待ち続ける』


これはシュリが一方的にした約束だった。


この身体のだるさも、赤い跡もいつか消える。
消えた時、ようやく初めて『切なく』なるのだろう、とそんな予感がした。
今はまだ身体にシャリアスがいた。『熱』という形で。
熱の冷めない身体はまだシャリアスを覚えている。


シュリはそっとピュアラズリに触れた。


「私も永遠にお前を愛する…シャリアス。」


もう決して聞こえない、そんな距離にいる彼に想いを馳せた。